「なーに?」
「葵、絵を描くの、好きか」
「うんっ、大好き!」
「そうか」
それならば、もうこれ以上、わけのわからないものに葵が翻弄されるのを見たくなんかない。
俺が忘れていただけで、見ないようにしていただけで、葵の心の傷は深い、それがあの絵に表れたんだ。葵が絵を描くのが好きだというのなら、それが苦痛になってしまわないように、俺は早いうちに手を打つ必要がある。
俺は見ないことに決めたからいいんだ。
俺は親なんかいなくたってもう平気だから。
だけど、葵、お前は俺みたいになっちゃだめなんだ。
こんなにきれいな絵を描いて、俺やサトや、さっちゃん、礼次郎さんに里奈ちゃんに里奈ちゃんのお父さんにお母さん、たくさんの人を感動させることができるお前は、その人たちと同じくらいに、幸福であるべきなんだ。