「ただいまー」

里奈ちゃんが葵の手を引きながら、俺たちのところに戻ってきた。葵はスケッチブックを小脇にかかえ、嬉しそうに俺に言う。

「ちとせくん、あのね、私の絵ね、たくさん褒めってもらったんだよ。嬉しくなっちゃった」

そう言って、ちとせくんも見て、と言いながらスケッチブックを差し出してきた。
俺は「サンキュウ」と言いながら笑顔でそれを受取ると、あぐらをかいた膝の上にのせて、一番上の厚紙をめくった。

「はー、やっぱすげえよお前」
「えへへ、ちょっと失敗しちゃったんだけどね」


葵は照れ隠しからなのか、そんなことを言ってから、少しばかり顔を赤く染めて微笑んだ。




噴水の水は透き通り、キラキラと弾けて遊んでいた。
その噴水のそばにはそれを見つめる子供たちがいて、風に揺れる花壇の色とりどりの花たちが、その子たちと一緒に笑っているかのようにイキイキとしている。



あまりにもきれいだったので、ため息しか出なくなってしまう。

俺の隣から絵を見ていた礼次郎さんは、今にも目が飛び出してしまうんじゃないかってほどに目を見開いて、一心不乱に絵を見つめていた。