「ちとせくん、公園行こうよー」

翌日、朝早くに葵が俺を起こしに来た。
大きなスケッチブックを両腕で抱えて、にっこりと笑う。

「えー…公園?」
「外の景色を描きたいの!」
「…ああ、スケッチな………公園ってどこの?」


葵は少し悩んだ後、大きな噴水のある公園に行きたい、と言った。


「噴水…ああ」




大きな噴水、と言われてすぐに思いついたのは、電車で30分ほど離れたところにある国立公園。

まだ小学校に上がるか上がらないかくらいのころ、じいちゃんとばあちゃんが連れて行ってくれた場所だ。
緑が多くて、人工だけど自然のような川が流れていて、雑木林と花畑がある、静かで綺麗な場所だった気がする。




確かにまあ、ビル街ばかり見て過ごしている葵にはいいかもしれない。
緑は目にもいいっていうし、あそこなら空気もきれいだろう。


「じゃあちょっと遠くなるけどいいか?」
「うん!」


葵は本当にうれしそうに笑う。

俺もつられて笑顔になった。


「よーし、支度すっか!」
「朝ごはんー」
「葵も着替えておいで」
「はーい」




黒のTシャツにカーキのひざ丈のカーゴパンツ。
俺の着替えはものすごく速い、今更だけど。

フローリングに散らばったさっきまで来ていたランニングシャツとひざ丈のゆるい感じの半ズボンを軽く畳んでベッドの上に乗せた。