人の噂も75日、なんてよく言うけれど、最近では1つの話題は10日以上もたないメカニズムになっているようだった。
事実、花田レイコの「男問題」は、ちょうど一週間経った雨の日、別の芸能人と芸能人の離婚という新しい話題にかき消された。

身勝手なもんだ。



「ねーねー、ちとせくん」
「んー?」

俺はちかちかと移り変わるテレビの画面を見るともなしに見ながら、返事をした。
葵は手に持っていたマンガ(この間さっちゃんがいきなり来て置いて行った)を読みながら、

「キスって、なに?」

と、訝しげな顔をして訊いてきた。



「……ハイ?」

どうしたんだ、なんでいきなり。



テレビの画面の映像が一瞬で無意味なものに変わって、俺は首だけ回して葵を見た。

「わかんないー…何がうれしいのかな、この女の子」
「どの女の子」

葵がマンガを俺に手渡した。
つい最近ドラマ化されていた、一昔前の有名な少女漫画だった。

「……それはー…」



説明しようもないので、俺にもわからないと適当にごまかした。
そして思った。
なんだってさっちゃんはこの漫画をチョイスして持ってきたんだろう。バカ。