サトは本当に15分でコンビニの前に姿を現した。
俺が「駅の前」と言ったときは、必ずこの場所なんだ。


「待たせたー」
「本当に15分で来たな、お前」

俺は目を向けるだけで触らなかった週刊誌から、サトに目を移した。



「だってお前、そりゃあ…別れたのか?」

「んー…そう」

「そりゃあ…なんつーかー…」

サトは何と言ったらいいのかわからないのだろう、適当に語尾を濁して黙った。




コンビニを出て、マンションに移動する。
その間に、美佐の話ではなくて、先に花田レイコの話をした。

「……やっぱりあれ、お前か」
「やっぱりって、お前、わかったのか?」


美佐はともかく、サトが気付くなんて思ってもみなかった。
あ、でも店長でさえ気づいたんだっけか。


「おまえなー。何年の付き合いだと思ってんだ。正直、『んなわけねえよなー』とは思ってたけど」




サトはすげえなあ、とケラケラ笑った。


「ちとせの周りって、いつもいろんなこと起きるよな。面白そうでうらやましい」と、サトは星の見えない晴れた夜空を見上げた。飛行機のものと思われる赤と白の小さな明かりが、ゆっくりと高い空を動いていく。

「しかも花田レイコとか。普通会うこともねえだろ」
「俺、稀な体験してんのかも」
「してるしてる」



そんな軽口をたたき合って笑った後、サトがふいに真面目な顔になって、小さな声で呟いた。

「…芸能人って、大変だよな」