ハコイリムスメ。

もしかして転んで頭打ったりどっか切ったりしてないよな…?



脳裏に、風呂場で倒れ気を失っている少女の姿が浮かび、ひどく恐ろしく思った。

洗面所のドアの前で耳を澄ませてみる。
何も聞こえない。





……この場合、入って良いのか?

非常事態にも関わらず、俺の中の何かが、俺の手の動きを止めた。

適当に探してきた着替え片手に、スライド式の曇りガラスのドアの前で立ちすくむ。
向こうにぼんやりと人影。

「あー、あのさ……、大丈夫?」
「う……」

大丈夫なのか、ホントにうめいてんのかサッパリ。

とりあえず洗面所に入った。
風呂場と俺を隔てているのは、またまた曇りガラス。

「……なー、えっと」

こんなとき、名前を知らないって不便だ。

「……」