どうして、美佐を泣かせてしまうんだろう。
どうして、俺はもっと早くに言わなかったんだろう?

花田レイコとファミレスに行ったから、だからこんなことになっただなんて俺には言えない。
いつまでも言うのを渋っていた自分が悪いと、よく分かっているから。

言わなかったのは、美佐を傷つけたくなかったから、だなんて、結局は自分のエゴでしかなくて、いいやつぶっているそんな自分に虫唾が走る。


フる側とフられる側、どう考えても前者は後者を泣かせてしまう。
どんな言い方をしたとしても、どんなに説明しても、そう、悪いのは心変わりしてしまった俺。





考えた末、俺たちは誰にも邪魔されない場所に移動することにした。

かといって、俺の家には葵がいるし、美佐の家は遠い。

ありがちなドラマのように、カフェやファミレスで話なんてして、関係のない誰かにあれこれ詮索されるのはまっぴらだと美佐が泣きそうな顔で主張した。それは、俺も同じだ。








「…………だからって、ここ?」

「仕方ねえだろ。思いつかなかったんだから」





ピンクの証明を普通のものに切り替えてしまえば、案外フリルだらけのピンクのベッドも、わざとらしいレースだらけのランプシェードも、普通に見えなくもない、と思い込むことにした。

「美佐、なんか……空気がわからなくなってきた…」

「………俺も」



同時にため息をついた。
俺の顔を見た後、ベッドの端に腰かけた美佐は、そのまま体育座りをするように膝を抱えて顔を伏せた。


「……私の何がいけなかったの?」


さっきも聞いたセリフだった。


「…美佐は、悪くなくて…そうじゃなくて」

「レイコちゃんと付き合うの?」

「いや、あの人はただの友達」

「……じゃあ、あの女の子?」

「……うん」