「で?花田さんの言う『友達』って具体的にどういう状態のこと言うわけ?」

今度は葵もちょっと真剣な顔で彼女を見つめていた。

俺たち2人に見られて、国民的アイドルは恥ずかしそうに「えっと、そうだなあ」と言った。

「…たまに、ほんとにたまにでいいから…こうやって会ってお話してくれれば、それで」

「え、そんなことでいいのか?」

「うん、もう十分です」

…ふうん、そんなもんなのか?

「私、レイコちゃんと遊びたいー」
「…って言ってるけど」
「うん、お仕事がない時は、私も葵ちゃんと遊びたいっ」
「ホントにっ?ありがとうレイコちゃん!」
「じゃーその時は葵をよろしくー」

花田レイコはまかせてください、と柔らかな笑顔を浮かべた。

「それから、電話とメールもしたいかな」
「ああ、いいよ」

俺はケータイを出して、開いた。
その行動に驚いたような顔をして、花田レイコは俺に訊いた。


「いいの…?こんな、わけわかんない女の言うことだよ?テレビの顔は嘘かもしれないんだよ?」

「わけわかんないって、お前ウケるな」



そりゃ、よく知らないけど。



「今、ここにいるのは『花田レイコ』じゃなくて『花田玲子』の方なんじゃねーの?
俺、うまい言葉でいえねえけど、芸能人のあんたと、普段のあんたは、同じであって違う人間だろ?
テレビの顔は嘘でも、今ここにいる顔は本物だろ、俺、自分の目で見たものしか信じないようにしてっから」


でかい目をそれ以上に見開いて、花田玲子が俺を見た。
わけも分からず顔をしかめる俺。


「…谷神くんは、本当に…不思議な人だね」

「えー?変人っていいたいのか?」
「ちが、違うよ!」

葵が笑った。
冗談だよ、と俺も笑って、それから赤外線で番号とアドレスの交換をした。