電話の相手のさっちゃんは本名、吉田皐月と言う。

年齢たぶん…20代後半。
前に訊いたら、『失礼ね!!』と、殴られた。



凶暴なんだ。
お取り扱いにご注意ください。




考え方が古くさいと思えば、案外子供のようなとこもある。




さっちゃんに初めて会ったのは、俺が小学校に入ったばかりの夏休み。つまり6歳か7歳。



………考えてみれば、10歳くらい歳の差があるってことか?

当時はさっちゃんはたぶん高校生、あるいは、中学三年生くらいだったんじゃないか?
良く覚えてないけど、制服を着ていた気がする。




じいちゃんとばあちゃんの知り合いの子供で、その日は一緒に夏祭りに行った。




『仕事?関係あるの?』
「うん、一応…無理?」
『…午後二時、良い?遅刻したら話は聞けない』
「恩にきるよ」

さっちゃんは電話口で、盛大なため息をついたようだった。

ああ、凹むなー…
さっきからさ、失礼だよいくらなんでも。



さっちゃんはそんな俺の気持ちに気付く様子もなく、当然よ、と言う。

『この時期相談多くて、忙しいんだからね?じゃ、あとで』


時期関係あるの?って訊こうとしたけど、どうでも良くなった。

あとで、と返して、さっちゃんが先に切ったのを確認してからこっちも切った。




………先に切ると、怒こられるからさ。


普通、かけた方から切るのが礼儀のはずなんだけど…
そんなの、知ったこっちゃないわって言われるのが関の山。


凶暴なんだ。お取り扱いにご注意ください。