「ちとせー、こっち」

サトが比較的人の少ない扉をさして、俺を呼んだ。
迷わずそっちに向かって小走りで移動し、それからジワリジワリと進む列の最後尾につく。

「はー、長かったなあ」
「んとになー。困っちゃうよな」

サトが「あーしんど」と言ってネクタイを緩めた。
俺もそれにならってネクタイを緩めた。






体育館の外は、暑いながらも風が心地よかった。


夏が思いきり俺たちを呼んでいるのに、外に向かって走りだせないのはなんとも歯がゆい気がする。
それでも、「通知表」を受け取らなくちゃいけなくて、だらだらと渡り廊下を他の生徒に紛れて進んだ。


「通知表見たくなーい」
「わかるうー。なんで休み前にへこまなきゃいけないのって感じー」

すぐ前の女子たちがだるそうに話す。

すぐ後ろの男子が、あーあーとだるそうにつぶやく。



サトが俺に問う。

「で?話したの?」

「………………まだ」


バカじゃねえの、と頭を叩かれた。