もう、ダメ。
俺1人じゃやっぱ無理です。







 
3回のコール音のあと、はい、ってハスキーな声。


「あー、さっちゃん?俺」
『名乗りなさいっていつも言ってるでしょー?何の用よ、ちとせ』



不機嫌そうな声。
別にいつものことだ、俺は彼女にとって厄介者の要素が6割くらいあるらしいから仕方ない。

あとの4割?

前に聞いたら、弟3割、良い男1割だってさ。

良い男の割合が低くて、ガックリしたのを覚えている。

別にカッコ良くないからいいけど。
超普通ですよ、どうせね。


『何の用?』




早く切りたいなあ、って思ってるのがバレバレだよ、口調から。

「ちょっと今日今から会えない?」

電話口でさっちゃんがため息をつく。



『…彼女を食事にでも誘うんなら、もっと気の聞いた言い回し考えなよね』



さっちゃんはそんなんじゃ振られるわ、と鼻で笑う。