「……っは…あ……」

インターホンを押した。
閑静な住宅地、そこに痛いくらい微かに響くチャイム。

十数秒後、『ハイ』と声がした。
サトのお母さんの声だった。

「あの……」

口ごもる俺の声を聞いて、向こうでおばちゃんが笑った。

『あら、もしかしてちとせくん?』
「あ……はい、こんばんは」
『あらあら~ちょっと待っててねー』

玄関の扉を開けたのは、トオルだった。

「ちとせさんっ!」
「よ、トオル」
「こんばんは!今母さんが兄貴呼んでくるんで。えっとー、あ、中にどうぞっ暑いんじゃないですか?」
「サンキュウ。でも、すぐ帰るから」

そうですかー?トオルは首を傾げた後、母さんまだ!?と上の階に向かって怒鳴った。