ホームに降りて行くと、ちょうど電車が発車するところだった。

閉まりかけたドアに割り込むように乗り込んだ俺を見たのだろう、車内に「駆け込み乗車はおやめください」とアナウンスが流れた。

だって、止まっていられないから。

これ以上1秒だって、今のサトとの状態を続けていたくなかった、だから、止まりたくなかった。




電車が止まると、誰よりも先に飛び出して階段を駆け上った。改札口に切符を通し、その勢いでサトの家まで見慣れた道を走った。

葵と出会った日以来、タバコは吸っていない。

体力が、戻って来ていた。



2つ目の信号を渡り、右に曲がって公園を抜けた。
あの日、サトと話したベンチが街灯に照らされて置いてある。

サトの家は、もうすぐそこ。