「……それで、峰島くんは美佐ちゃんにアンタの家を教えたの」


話が終わるころには、ちとせはもう私に背を向けていた。



その背中からは、なにも感じ取れない。
静かに、世界を拒否している。




「───ちと」
「バカじゃねえの」

本当に、消えそうな声だった。

「………本当、あいつはバカ野郎だよ」


声が震えるから、気づいた。

彼は、泣いていた。



小さく鼻をすする、大きな背中。


いつから1人きりだと思っていたのか知らないけれど、アンタは1人じゃないんだよ。

考えてごらん。

アンタのことをこんなに大事に思ってくれてる友達がいるじゃない。

もっと、頼って欲しかったんだよ、彼はちとせに。
もっと、わがままになって欲しいんだよ、私はアンタに。