ハコイリムスメ。

恐る恐るインターホンに近づいて受話器を取る。

液晶画面に表示された人物は、俺の予想を大きく裏切った。

『やほー、元気?』

大きな目、ショートヘア。
こっちに向かってパタパタと手を振るのは、

「さっちゃん!?」

俺の半保護者。



「何しに来たわけ!?言っとくけど、何も困ってねえぞ今!」
『あー、あのねえ、実家から大量にそうめんが送られてきたの。でも、私茹でたりとかしたくないし。で、あんたに頼もうと思っ』

受話器を置いた。
画面から消えるさっちゃんの姿。

なんで俺がそうめん茹でなきゃなんねんだよ…こんな、悩み(?)も中心にいるのに。

「誰だったの?」
「いや…」

部屋に戻ってきた俺に葵が訊いたけど、適当に言葉を濁す。



ところが、さっちゃんが諦めて帰るわけなかった。

ピーンポーン、ピーンポーン、ピーンポーン…
ピピピピピピピーンポーン…

連打…
………はあ…。

鳴り続ける音に葵は怯えるし、うるさいしで、俺は仕方なしにもう一度受話器をとった。