ハコイリムスメ。


「…変なやつ…」

俺はエレベーターを睨んだ。
お前なんかに俺の気持ちがわかるかよ、みたいな心境で思い切り。

葵の泣き声が小さくなって、やがて肩の震えも収まった。
少女はそれでもなお、俺の服をつかんで離さない。

「…葵、俺ちゃんとアイス買って来たよ?」
「…」
「溶けちゃうよ?食べないの?」
「…うー…」

そっと俺から離れて、思いきり目をこする。
涙はすぐに姿を消して、残ったのは少しだけ赤くなった大きな目。それは俺にむけられていて、少しだけ照れた。
そんな場合でもないっつーのに。

「食べるよな?」
「うん、食べる…」



笑顔が見れないのが、辛い。

嬉しそうな笑い声、聞きたかった。



───なんでだか、考えてみろよ。



遠くからサトの声が聞こえた気がした。
考えたくない。
今はまだ、これだけがいい。



俺は葵の手を引いて、俺たちの家へ戻った。