ハコイリムスメ。

この気持ちはなんだろう。

涙でぬれるYシャツ、通路を抜ける風。
遠くに小さく小さく聞こえる、エレベーターの稼働音、自動車の音。

全部がそこにあるから、今、俺の世界は動いてる。




「ちとせくん…やだよ…いかないで、ここにいて」

「葵、」



サトがゆっくりと俺を見た。

「ほら、…わかるだろ、ちとせ」

静かで、何かに気付かせようとする声。

「…何、が」


わかっていた、

きっともう、

ずっと前から気づいていた。


「お前はもう、…ん、ずっとまえから、1人じゃないんだってこと」


そんなこと、




知っていたんだ。