「はい、完成ー」

望月が満足げに俺の髪を見ているのが鏡ごしにわかった。
俺は俺で、前より随分アッサリサッパリ、なのにどこか「デキる男」のような不思議な気分にさせる髪型を見つめた。

「うしろは、こんな感じねー」

大きめの手鏡を持ってきた望月が、それと鏡台との角度をゆっくり変えながら言った。

うまい具合に後ろ髪も見える。
合わせ鏡ってどこまで続いてんの?



前髪はアシンメトリー。
ガタガタと言えばガタガタだけど、バランスがいいのでむしろカッコいい。
そんで長め。

襟足は相変わらず長いし、色もトップと比べると暗め。
訊いたら、あえて3色染めをしたんだよーと、例のユルいスマイル。
3色にする意味がよくわからないけれど、なじんでいたので気にしないことに決めた。

サイドの髪は、これまたバランスよく散らされていて、髪だけ見れば俺はモデルみたいにカッコよかった。

………あくまでも、髪オンリー。
それ以外は平凡男子ですからね。



「お疲れ様~」
「サンキュ」

俺は布を外してもらって自由になった首を軽く回した。