「じゃあ、行ってくる…」
「うん!」




飛び起きて、すぐ。

バタバタと制服に着替え、朝飯作って食って、髪を直し、夜のうちにネットに入れたり部分洗いをしといた洗濯ものを洗濯機に放り込み、全自動のスタートボタンを押した。



全部で約30分。
今は7時32分。
普段家を出るのは、7時15分。

まぁ、遅刻でも構わないけどさ、別に。
何だかんだで、ようやく玄関に立っている。

俺は、全てが正常だと能天気に信じていたときに思った髪のことを、さっき鏡に向かい合って思い出した。

切りに行かなきゃ。
染め直したいし。


「…葵?」
「んっ?何ー?」
「俺、今日髪切ってくるからさ、ちょっとだけ遅くなっちゃうかも」
「えー?つまんない…」

膨れて俯く。
ゆるやかに揺れる髪。
出会ってまだ3週間強だけど、ちょっとのびたかな…

「ごめんなー」
「あ!!サトくん来る!?」

そんなにキラキラした目で、俺を見ないでくれ。
本当のこと、葵には言えない。




ん?

………言えない?
なんで?


っていうか、俺、過保護すぎだよなぁ…
もはやシスコンくらいの過保護。


アイツが葵を好きだとして、なんで俺が怒る?
わかんねぇ…


葵がちとせくん?と呼ぶ声で我に帰る。