俺が叫んだせいだろう、隣で寝ていた葵が起き上がって、え、何?どうしたの?と俺に訊いた。


「ごめん…なんでもないよ」


謝って、葵の頭を撫でる。
サラサラと栗色の髪が揺れた。

「寝てていいよ」

葵は眠たそうに目を擦ったけれど、首を数回横に振って、

「んー、目覚めちゃったぁ…起きるー」

と言った。
そのままベットから出て、伸びをする。

おい、Tシャツの裾から腹出てるよ腹。
腹チラだよ、葵…

どうしよう、アイツが万が一でもこれ見てたら。
ああああ…
もう、やだ…




学校行きたくないなあ…とぼんやり思ったけど、葵が起きるというのなら、寝てるわけにもいかなかった。
俺が起しちゃったわけだからさ。
これで寝たら、なんかセコくない?





前の日に何があっても、地球が止まってくれるわけじゃない。
いつもと同じように東から太陽が昇って、風が吹いて、雲が流れるのが見える。

いつもと違うのは、俺だけなのかなあ。
俺と、俺を取り囲むほんの少しの世界。



俺と、サトと、葵と、美佐。
4人に関係する空間だけが、きっと今日から違ってくるんだろう。



変化の理由を知るのは、良くも悪くも俺とアイツだけ。

ああ、美佐になんて思われんだろう?
自分のせいだって気にしたら、悪いじゃんか。



やっぱり、俺は最低で。