説明しろよ、という俺の言葉を遮るようにして、今度は盛大なため息をついた後、微笑しながら言う。


「お前、いい加減にしろよ。わかれよ。渡里がお前んちいったら、お前は間違いなく俺を頼るだろ?俺がそこでサクッという。『葵ちゃんを俺んちに泊まらせれば?』この一言で万事OK。お前は彼女と2人きり、俺は葵ちゃんと一緒にいられる」






「………」







人間、本当に驚くと声が出なくなるものなのか。
動けなくなるものなのか。

へえ、勉強になった。






「ざけんじゃねえよ…お前、何?今までダチみたいに振る舞ってたの、あれ嘘か?」


ここで嘘、って言ってくれたら、俺はまだ救われたかもしれない。


「ちげえよ。お前は俺の親友だけど?」


サトがいつもと全く同じように笑ったから、嫌悪と憎悪が押し寄せて、俺はサトを思い切り右の拳で殴った。

喧嘩じゃ、1度だって負けたことのない、俺の手。
夜の街で「谷神ちとせ」を知らないやつがいない原因はこれだ。



サトに向けちまった。



俺、なんか、もう、最低最悪。