「俺、泣いてないよ?」

普段葵にするように腰を落として目線を合わせ、りなちゃんに言う。


「ほら、笑ってる」


りなちゃんはふるふると首を振った。

「お兄ちゃん、あのね、泣きそうなね、目にね、なってるの」
「目………?」

なおも俺をじっと静かに見る。
俺はりなちゃんの言っている言葉の意味が分からずに、呆然としてしまった。

アホ顔?
きゃっきゃっとりなちゃんが笑う。

「すみませんね、この子が」

お母さんが俺に会釈しながら言った。

「あ、平気っすよ…子供、好きですから」
「いまねー、お兄ちゃんとお話してたのー」「そう、良かったわね」

柔らかく微笑む、りなちゃんの母親。





葵は、あんな風に笑いかけられたことがあったのかな…
俺は、こんな風に親と過ごした時間を少しでも持ってるんかな?