ゲーセンほどではないけど、エントランスの明かりが眩しい。

なんだってこんなに煌々と照らすようにつけるんだよ。

オートロックを解除して中に入る。
ロビーを突っ切ってエレベーターの前に立ち、手をつないだままの女の子を見た。

「着いた、けど」

俺がそう言うと、彼女は顔をあげた。そしてエレベーターに乗ろうとする俺を、引っ張った。
驚いて振り向くと、首をしきりに左右に振り動かしている。


「………は?何」
「や………」
「!!」


初めて耳にした、とても小さな声。






なんなんだ?



この子は声が出ないかなんかの障害があるんじゃなかったのか?




何の確証があったわけでもない想像に

完全に、自分の思い込みだった…それだけなのに、なんだか異常にいらついた。


確かに俺の勝手な推測だった。
でも、的を射てると思ってたのに。


まさか、全部演技か?
俺、騙された?



そう思ったら、急に怒りが込み上げてきた。
また勝手な思い込みかもしれない、なんて考える余裕はなかった。


人生最悪の夜だ。
ケンカは中途半端で終わるし、自分の居場所で、中学生、しかも女に騙された。



俺の頭の中で自分勝手な怒りがさらにふつふつと湧き上がる。






ざけんじゃねえよ。