ハコイリムスメ。

 

「…美佐、ごめん。俺、どうしてもサトに会いに行かなきゃ…」
「え…」


美佐は驚いた顔で俺を見た。


「なんで?お願い、これ喋っちゃったこと言わないでよ」
「ごめん、それは無理」
「なんでよ!!」


なんでって言われても。


「無理なものは無理。ごめん、帰って、今日は」
「そんな…バカなこと言わないでよ!!帰るのは、うん…帰るけど…明日学校だし…」
「分かんねーこと言ってないで、支度して」
「ちとせ、どうしちゃったの?急に…変だよ」


変?
はあ?



「うるせえよ!」




勝手に動く口。
暴走しかかってるのが、自分でもわかる。

さっきまでは暖かだったリビングの空気が、今じゃ凍りついている。
テレビから聞こえる笑い声までも、今の俺にとっては耳障りな雑音と化していた。