ハコイリムスメ。

お手伝いさんでも雇え、そう遺言に書き残したじいちゃん。
だけど、それだけは実行しなかった。



だって、必要なかったから。
残してくれた言葉と優しさ、そして、莫大な金。
十分すぎる、生活の材料。





そう、満足してる。
最悪なんていったら、バチが当たる。
それは、間違いなくじいちゃんたちからの。





美佐が目の前で泣いてる。

泣かせたいワケじゃないのに、俺、何やってんだろう?




「ごめん、美佐」




そう言ってから、抱きしめた。

ときどき震える肩。

俺の肩は、美佐の涙でぬれた。