「ねーねー、もういい?」
「ん?」
「美佐ひっくり返したい!!」
「お前には無理だって」
「えー!?」
大きなお好み焼き。
ひっくり返すの、結構大変なんだからな?
美佐は口を尖らせた。
「やってみたいー。だめ?」
「だーめ。」
美佐がの両手握られていたヘラを受け取って、生地とホットプレートとの間に差し込んだ。
思い切って(思い切り、大事。)ひっくり返すと、ちょうどいい焼き加減。
「うまーい!!」
「あ、そ?」
「うん!!」
嬉しそうに笑う美佐。
俺は、正直複雑な気分だった。
……………………?
え?
複雑って、何が?
何考えてんだろうと首をひねったら、美佐が不思議そうな顔をした。
そのしぐさがあの少女に似ていたので、俺の脳裏に葵とサトの姿が浮かび上がった。
あーあ…
葵、サトと何してんだろ?
映画って、何見てんだろ?
本当なら今日、あそこに座ってたのは葵のはずなのに。

