質問を繰り返す葵を納得させたのは、10分後だった。
ナマモノ、考えてみれば氷を入れてきてたから多分大丈夫だろう。

「おやすみ、ちとせくん」
「おやすみー」
「じゃ、上手くやれよな」
「おーまかせとけ。そっちは頼むぜー」


手を降る葵が小さくなるまで見送ったあと、コキコキ首を動かした。

──臨戦態勢完了、っと。



美佐のいるらしいエントランスに向かう。






それにしても、どうして分かったんだろう?誰かに言ったっけかなぁ…?いや、サトしか知らないはず。うん。サトが美佐にチクるわけ無いし、うん。


じゃあ、誰?


いくら考えてもぐるぐると同じところをめぐるだけで全くの無駄だったので、俺はため息をついた。

………無い脳みそ使ってもラチあかねぇな。
結局のところ、隠し事は向いてないんだよな、俺には…



彼女の姿が見えたので、駆け寄る。


「美ー佐っ」


声をかけると、パッとこっちを向いて、顔をほころばせた。


「ちとせっ」