「暑っ…」
「そう?」

俺の不満に、首をかしげた。

その行動に和んでいたら、ふいに後ろから声がかかった。

「ちとせ!」



振り返ると、サトが、息を切らして立っていた。



「おー、どした?」



「渡里…が、お前んちの…前にいる」




一瞬、思考回路停止。



「…は?」

俺はサトに訊き返した。

「正確には……、マンションのエントランス入って…すぐのロビー…に」

イラついてるみたいで、若干早口で言われた。

「は?」
「は、じゃねえって…だーかーらー…」

息切れがちに言う親友の言葉を遮った。


「いや、わかっってる。美佐が俺んちの前にいるって、な。つか、なんで場所知ってるんだよ」
「俺が知るかよ…。とにかく、このまま帰ったらまずい」
「だって、生モノ買って…食えなくなんだろ、この暑さの中じゃ!」
「暑くないよー?」
「や、暑いって」
「んなこと言ってる場合じゃねえって」

でも、なあ。

「どうしろって?」