まだ俺の手を放さない。

「…」

何をそんなに怖がってるんだろう?
自分からつかまってきてるくせに、なんで恐怖の色をその目に浮かべてんだ?

なあ、なんで泣きそうなんだよ。
こっちが泣きたいよ、泣く理由もないけど。


………あー、なんかもー、面倒くさくなってきたー…。


「お前名前は?」
「………」

問いかけてみても、やっぱりしゃべらない。



一瞬後、俺の頭の中で、ちかっと何かが光った。

もしかして、『しゃべらない』んじゃなくて、『しゃべれない』んじゃないのか?


ほら、生まれつきの障害とかで。





その思い付きは正解に近い気がした。
それで、勝手に決めつけてみた。

すなわち、この子は声が出ないかなんかの障害があるのだと。
時々反応はするから、耳は聞こえてるんだろう。


「あー…うん、そうかも」

頭の中でつながったので、ちょっと気が緩んだ。

となれば、らちがあかない。
とりあえず、俺はもう眠い。そして、弱い奴らとやったから、むやみに疲れてる。
っていうか、気疲れ?
明日は学校あるし。