親切な人って、どこまでも親切なんだなあ。






俺はこの人が、というよりこの場所が好きになった。

涼しいし、親切だし、さっちゃんは相談に乗ってくれるし。

言われなくとも、また来よう。

軽く決意をしていたら、さっちゃんが葵に向かって変なことを言った。

「葵ちゃん、ちとせをよろしくね?」


…うん?
俺をよろしく、だって?


「はあい」

素直に返事をする葵。
いやいやいや…ちょっと待ってよ。

「え、逆じゃねーの?」
「うるさい。とっとと行く!!」
「リョウカイデス…」

さっちゃんもすっかり元通り。
あーあ。どうせなら最後まで穏やかオーラで居ろってんだよな…


右手は葵とつないで、左手は軽く上げて。
俺はまだ暑くて眩しすぎる外に出た。


だからさっちゃんが「きっと…大丈夫だからさ」って呟いたのに気づかなかったんだ。