「ふああああ……良く寝た…」
「あ、おはよう、ちとせくん」

あり?
なんでここに葵が…

「もう話し終わってから1時間くらいたったわよ」

さっちゃんが葵の隣で笑いながら言った。

「え?マジすか…じゃあ、…………え!?今何時!?」




慌てて見上げた大きな柱時計から、ちょうどいいタイミングで「ぼーん…」と音がした。
文字盤は2時半を指している。

「あああ!!どーりで腹が減るわけだ…うん」
「なにバカなこと言ってんの」

へいへい、どうせバカですよ…
バカで、考えるの疲れたから寝てたんじゃん俺。

「それより、葵ちゃん絵上手ねー?モノクロなのに、凄いのよ」
「うん?…ああ、そうだ、今日は絵の具やら色鉛筆やら葵の服やらなんだかんだを買いに行くつもりで…」

なんて言いながら覗きこんだ何かのプリントの裏紙。
そこには鉛筆一食で、誰かの顔が描かれていた。



って、誰かじゃねえ!!
どこかで見たと思ったら…俺じゃん!!
つか、ウマ!!



「天才!?葵天才!?」

わしゃわしゃっと髪をかき混ぜると、「きゃあ、やめて」と、笑い声が聞こえる。


「…うん、良かった」
「なー、良かったよなー!!笑うようになってくれて!!しかも、めちゃくちゃ笑い顔かわいいだろ!?そう思わないさっちゃん!?」

得意げに笑う俺、今日は珍しく穏やかなさっちゃんは、そうね、と、俺の頭をなでた。

「は?え、何?」
「ううん、何でもない。時間良いの?」
「あ、行かなきゃなー。葵、お絵かき終わり!!買い物に行こう?」
「えー?なんでー?やだよー」

やだよ!?
ガーン、反抗期!?