そうねえ、また財布でも買わせようかしら。

ちょうど欲しいのが出たのよねー。


そんな風に思いながら、私はちとせの頭を乱暴になでた。

よっぽど深い眠りなのか、目を覚ますことはない。




ちゃんと、守ってあげなさいよ、ちとせ。
せめてこの夏の間だけでも。

いくらなんでも学校に行かないというのはまずすぎるから、このまま放っておくわけにはいかないの、事情を知っている大人としては。

いずれは施設に行くか、親の元に戻すように取り計らわなくてはいけない。

たぶん前者になると思う。



でも、私っていう一個人的には、このまま2人でいて欲しいのよ。



矛盾を抱えているってよくわかっている。
だけど、両方私の本心だからどうしようもないのよね。



「はー、あんたの人生、楽に行かないわねーちとせ」

「…?」



私がつぶやいた言葉の意味を、葵ちゃんは知らない。