人の良さそうな笑顔。
俺の母親も、生きていたらこのくらいの年齢かなあ?

「ありがとうございます」

にこりと笑って会釈をし、コイン投入口に120円を入れた。










革張りの白いソファーに座って缶コーヒーを一人飲みながら、さっきの葵の「好きだよー」の言葉を思い出してむせた。

「ゴホッ…うげー…」
「あら、大丈夫?拭くもの持ってこようか?」
「いや、大丈夫っす……や、すみませんやっぱりお願いします」

はいはいって、笑われちゃった。
あーあ、だっせーなあ、俺…

Tシャツが白じゃなくて黒で良かった…
茶色いシミの付いた服着て、街を歩くなんてありえねえ。

そんなくだらないことを思いながら、借りたタオルの端をシャツの中に入れ、反対側の端ででポンポンと叩く。
こすったら逆に落ちないもんな。


「よく知ってるわねえ」
「ああ、家事自分でやってるもんで…」

今度は褒められた。
株上昇?
まあ、だからどうしたって言われたらそれまでだけどさ。









「…うーん…」




好き、かあ…


葵はたぶん、『グレープフルーツ』や『ひまわり』を好きなのと同じように、俺を好きと言ったんだろう。