信さんについて、ほんの少し、説明をしようと思う。

信さん…石田信之、俺と同じく、あのゲーセンの常連。

ガンゲームや、音ゲーで競ってよく遊ぶ。

今のところ、俺はガンが61戦33勝、音ゲーが74戦、36勝。

年は多分30後半から40前半。
一度、奥さんと子供に会ったこともある。


その信さんは興味深々といった感じで、俺たちを見ていた。


「あー…秘密ー」
「だと思った」

彼はふはは、って笑ったあと、お待ち、と2つのどんぶりを差し出した。
頼んでない卵が乗っかっていて、訊いてみたら、今サービス期間だからと言われた。

俺たちの間には、一方的に相手の私生活に極端に踏み込まないという、暗黙の了解みたいなものがあって、家族に会ったのは、信さんが望んだから。

中1の男の子は、すっかり俺になついてしまって、たまに昼に遊んだりもした。


「いただきまーす」

葵が手を合わせて、丁寧に言う。
信さんが、今時珍しいなと笑う。
俺も珍しい内の一人だけど、なにか問題でも?

俺と一個開けて隣に座っていたおじさんが、ごっそーさん、と笑っい、カウンターに350円置いて出ていった。

「葵、朝からこんなの大丈夫?」
「うん?おいしーよ?」

ニコニコ笑顔の少女。