葵はビクッと肩を震わせた。

「あ、ごめんごめん」
「うん?………あ、ちとせくん」

画面を指差して、笑いながら言う。
揺れた薄茶の髪から、水がポタッと落ちて、俺の腕にかかった。

「冷てっ」
「へ?」
「こいつ―――!!」

バサッとバスタオルをかぶせる。

「わあっ」
「ちゃんと拭けっていつも言ってんじゃん!!」

あぐらで座ってる上に座らせて、わしわし頭を拭いてやる。
葵はきゃあ、と楽しげにはしゃいだような声を上げる。

「くすぐったい~」
「………葵お前」
「ん?」
「……なんでもないよ」


お前、すごいなあ。




葵は進歩が早い。
いつの間にかまた新しい言葉を覚えている。

ああ、努力が実ってる…!!

「よしよし」
「ん?」

頭を撫でると、不思議そうに振り向いた。クーラーの効きすぎた部屋では、葵とくっついていると幸せなほど温かい。

ちょっと甘やかせ過ぎな気もするけど、今まできっと辛かったはずだから…



…だから、まぁ少し位は。





この様子を美佐が見たら…
ヤバい、殴られるかもな、俺。