「あーおいっ」

コンコンとドアをノックして、部屋に入った。
真っ暗かと思ったけど、違う。
小さな明かりがついていて、部屋の隅のベットで葵が寝息をたてているのがうっすら見えた。

近付いていって、かすかに上下している肩に手をかけようとしたのだけれど、やめた。
見ていたかった。

幸せそうに眠る少女を起こすのは、悪いことのように思えたんだ。この幸せを壊すことは許されないだろうと。



………でもオムライス冷めるし…

「葵」

とんとん肩を叩く。
浅い眠りだったのか、すぐに目を開いた。

「ちとせくん」
「おはよ葵。オムライスできたよ」

大きな笑顔。
見ているこっちも幸せになれるような、ひまわりのような笑顔。

やったぁって叫んで、部屋をバタバタ出ていった。


向こうから「おー、葵ちゃん起きた?」「サトくんおはよー」と、声がした。



俺にはおはよう言わなかったなぁ…
さみしーわ、正直。

「ちとせー食おー」
「あ、今行く」