「ただいまー」

玄関に上がると、サトが情けない顔をして立っていた。

「遅ぇよ、マジ死にそー」
「わりわり……やぁー、ケンカ自体はすぐ片付いたんだけどー………て、葵は?」

リビングに居ない少女の行方を問う。

「寝ちゃったよ、ちとせが遅いから…なんでもいーから作れって」
「ああ、そうだった」

手を洗ってキッチンに立った。





独り暮らし歴が長いせいか、俺はむやみやたらに料理が得意だったりする。

本を見れば大抵作れるし、レパートリーもだいぶ増えた。


玉ねぎをみじん切りにしていたら、向こうから声。

「テレビ見て良いか?」
「あ、リモコンそこ」
「さっき叩いたもんな~俺の頭を」
「なんのことだ?」

すぐに歌番組が映った。

「あれ、コイツ………」
「あ?」

さっきの女?
ハナダレイコ?



………関係ないか…俺には。