「........ッやだ!!!」
自分が叫んだと同時に開いた目には入り切らないくらいの涙を浮かべていた。

「ゆ....め」
一気に現実世界に引き戻された私の体は、じっとりと汗をかいていた。私は服で涙を拭って大きく息を吸って吐き出す。

「はあ。」

私はゆっくりとベッドから状態を起こし、一階のリビングに向かった。まだ体がだるい。

「おはよう、とうさん、かあさん。」

「ああ、おはよう。胡蝶」
「おはよう。昨日はよく眠れた?」
「ああ........うん。よく寝れた。」

嘘だけど。父さんと母さんにはいつもこんな感じ。だって私が寝れなかったって言ったらすごく心配するでしょ?

「胡蝶、朝ごはんできてるよ。早く座って食べなさい。」
「うん、いただきます。」

母さんに促され、私は手を合わせながら自分の席に座って朝ごはんを食べた。

「そういえば今日、学校に行くんだったわよね?」

「うん、なんか緊張するな....。友達できるかなぁ?」

「大丈夫よ!胡蝶なら。ねぇ、あなた。」

「ああ、そうだな。ところでもう学校の下見は終わったのか?」

「うん。この前行ってきたよ。きれいな校舎だったし。前の学校よりも過ごしやすそう。」

私の父さんは仕事が忙しくしょっちゅう転勤をしている。その度に私は転校転入を繰り返し、引越しをしても最高で3年くらいしかその場に留まったことがないくらいだった。

(まあでも、友達はちゃんとできてたからいいけどね。)

「そうか、今回の転勤でしばらくここにとどまることになったから、胡蝶に負担かけなくてすむな。」

「あら、そうだったの!良かったわね胡蝶!父さんしばらく転勤しないって!」

「え?そうなの?よかったー!あ、ごちそうさま、じゃあもう私行くね。」

「ちょっと待って車で送っていくわよ。」

「んーん、いいよ、歩いていくし。」

「............でも、」

「大丈夫だってばー!もういくね。行ってきまーす!」

心配そうな顔をしている母さんにそう言って私は強引に玄関を出た。