『........荒井くん、ごめんね。』

それしか言えなかった。

荒井くんはそれ以上何も言わない私を見て諦めたようだった。

「........ごめんな。無理に聞くつもりはなかったんだ。」

(荒井くんは何も悪くない、悪くない........のに)

「ううん、大丈夫。」

「........白石。」

無理に笑おうとしたのがバレたのか荒井くんは悲しそうな顔をして言った。

「俺の前ではそんなに無理して笑わなくてもいいよ。」

「えっ............。」

驚いた。荒井くんがそんなことを言うなんて。

(荒井くんから見た私って、そんなに無理してるように見えるのかな........)

自分では全くそんなつもりはなかった。

「白石、俺........。」

といって荒井くんは口をきゅっとつぐむ。

「いや、なんでもない。」

「........大丈夫だよ、荒井くん。」

私が言うとえ?と言って荒井くんが顔を上げる。

「自分がそんなに生きられないのなんて分かってたことだから........。」

荒井くんは黙る。でも、少ししてまた口を開いた。

「俺、白石のそういうとこ........嫌い。」

荒井くんの意外な言葉に一瞬耳を疑った。

「だって白石、いつも大丈夫大丈夫って........全然大丈夫じゃねーじゃん!本当はみんなに気を使ってんだろ?だから俺はそんな白石見てると腹が立つ。もっと頼れって言いたくなる。もう他人に気を使うのはやめろよ。」

「................ッ」

悔しいけど、荒井くんの言ったことに嘘はなかった。

「............わ、たし........は」

少し声が震えているのが自分でもわかった。

「............ごめんな。」

「........え?」

「つい感情的になった。........もう帰るな。」

荒井くんは踵を返して突然病室から出ていってしまった。




気づけば私はシーツを手で力いっぱい握り締めていた。