「あと………ごかげ……つ?」

信じられないというような混乱したようなそんな顔で医者を見た。それも横にいた父さんと母さんも同じようで、2人とも呆然と先生の話を聞いていた。

「………あなたの御両親だけにお話しようかどうか迷いましたが、やはり、御自分で知られていた方が良いかと。」

(せっかく、せっかく頑張ろうと決めたのに)

「しかし、少し御両親にお話があります。なので娘さんを一人にするような形になりますが……。」

「私は大丈夫です。」

言われたときは混乱していたが今はなぜか落ち着いていた。

「わかりました。では御両親はこちらに……。」

医者に促され、ヨロヨロと2人ともが私の病室を出た。父さんと母さんの顔を見てみると、ただ呆然としているだけで何も喋らなかった。

病室には私一人が取り残されていた。暇だったので、夕日に染まる雲を見つめた。

( 消えちゃうのかな?私、いつかこの世界から)

「白石」

名前を呼ばれ振り返る。

「……荒井くん。」

そこには、エナメルバッグを持った部活帰りだと思われる荒井くんがたっていた。私は荒井くんに笑いかけた。

「来てくれたの?そんなとこで立ってないで中に入って。」

私が言うと荒井くんは静かに病室に入ってきた。

「座っていいよ?」

でも荒井くんはじっとこちらを見たまま一向に座ろうとはしない。その代わりつぐんでいた口を開いた。

「........さっき、白石と、白石の父さん母さんが医者と話してるの聞いた。」

「えっ............」

「........ッなんで、なんで話してくれなかったんだ?ホントのこと。」

荒井くんは悲痛な顔で言葉を続けた。

「........最近白石が調子悪そうなのは横で見てわかってた。」

でも....、といって荒井くんは口を噤む。少しの間沈黙が流れ、荒井くんは再び口を開いた。

「でも、白石は何か、大きなことを抱えてるんじゃないかとも思ってた........。だから、あの話を聞いたとき、嫌な予感が当たったようで正直怖かった。」

私は困惑した。荒井くんが話を聞いてた?じゃあ............

「........待って、てことは私の命が後少しだってことも聞いていたの?」

荒井くんは静かに頷いた。

知られてしまった。知られたくなかったのに。

「........なぁ、白石。ホントのこと、教えてくれよ。白石の病気のこと。」

荒井くんは悲しそうな、苦しそうな表情で私を見た。

(........なんで荒井くんがそんな顔するの?)

私はうつむいた。口が動かない。

いや、もしかしたら話なくなかっただけかもしれない。


「........荒井くん、ごめんね。」

やっと出た言葉はそれだけだった。