「うっく....ひっく....っ」

どうしょうもない思いだけがどんどん溢れていく。私が泣いている間、その人は優しく背中をさすってくれていた。私が落ち着くと、その人はそっと離れた。
私の顔は涙でぐしゃぐしゃになっていた....................と、おもう。

「落ち着いたか?」

その人に聞かれ、私はうつむいたまま小さく頷いた。その人は私の頭を撫でてくる。
....ほっとする。

「白石........。」

名前を呼ばれてその人を見る。

(なんで私のなまえっ........)

それを察したのかその人はふっと口元を緩めた。

「なんでって顔してんな」

「........はい。」

「....俺、白石とは一回あってるんだよ。んー、いや、会ってるってか、助けただけなんだけどね。」

「え?」

目を見開く。助けたって助けたって助けたって............、


ま、さ、か


「あ....の、もしかして、私が倒れたとき助けてくれたのって............。」

「うん、それ俺。」

もしかしたら人生の中で一番驚いたかもしれない。私は目を瞬かせた。

「2日前、俺はちょうど塾の帰りだったんだ。そしたら白石が電柱に手をついて今にも倒れそうだったから。駆け寄って声をかけたんだ。青ざめてたからこれはやばいなって思って救急車呼んで............。」

やっぱりあれはこの人だったんだ。なんかとても初めて聞いたとは思えなかったから。



「........そうだったんですか。迷惑かけてしまって本当にすみませんでした。ありがとうございました。あの........、名前は........。」









「菅谷 洸樹」

菅谷先輩はとろけそうな笑顔を向けて言った。