そうして迎えた、舞台【刹那との邂逅】公演最終日。
幸か不幸か、蓮の仕事は朝からしっかりと組まれていた。
しかし蓮は頑として一つの仕事もしないとマネージャーに告げ、激怒されていた。
一向に全く首を縦に振らない蓮に、業を煮やしたマネージャーは怒り狂って叫んで止まない。
「蓮、こんなことをしちゃあ、俳優としての君は終わるぞ!?」
「俳優としての君? それは役者『椎名蓮』のことですか」
「あぁ、そうだ。今、まる一日突発的に穴を開けるなんて、君にとって一分の利益も生まないだろ!?」
そう言い切るマネージャーに、蓮は大声を上げて笑った。
この人は、知らないのだと蓮は思った。
人生の何を引き替えにしても、手に入れたい刹那が世の中にはあるってことを。
「日野さん。悪いけど、俺の刹那を取り戻せなかったら、どっちにしろ椎名蓮は死ぬよ」
「はぁ?」
わけの分からぬことを言い続ける蓮に気でも狂ったのかと思ったが、日野の目には連は狂ったようには映らない。
それどころか確実に生気を漲(みなぎ)らせている蓮に、強すぎる生気を感じるほどだ。
俺の見てきた、椎名蓮とは……こんな男だったのか?
日野は、アクターの底力を見たような気さえして、ブルリと震えた。
「悪いけど、もう行かせてくれ。頼む、後生だ」
「後生って、……おい、蓮!!」
言いながら颯爽と駆け出した蓮に追いつけず、マネージャーの日野はマンションの駐車場で蹲った。
多分、どうしても駄目なんだろう。今日の彼を止めることは――
そう納得した日野は諦めてスマホを取り出した。メール作成画面を開いて、椎名蓮宛てに打ち込む。
『頼むから、ゴシップだけは勘弁しろ』
あそこまで言うのだから、相手は女に違いないと単純に日野は思った。
ストイックなまでに女性関係の綺麗すぎる椎名蓮。
だからこそ、今日の異常な彼を日野は止めたくなかった。
これからの自分がしなければならない『彼の不始末の始末』を思えば荷が重いが、それでもやってやるかと顔を上げるしかない。
そう覚悟させる程の熱意を、蓮から感じてしまったのだから。
これは、日野がどうにかしてやるしかないのだろう。
幸か不幸か、蓮の仕事は朝からしっかりと組まれていた。
しかし蓮は頑として一つの仕事もしないとマネージャーに告げ、激怒されていた。
一向に全く首を縦に振らない蓮に、業を煮やしたマネージャーは怒り狂って叫んで止まない。
「蓮、こんなことをしちゃあ、俳優としての君は終わるぞ!?」
「俳優としての君? それは役者『椎名蓮』のことですか」
「あぁ、そうだ。今、まる一日突発的に穴を開けるなんて、君にとって一分の利益も生まないだろ!?」
そう言い切るマネージャーに、蓮は大声を上げて笑った。
この人は、知らないのだと蓮は思った。
人生の何を引き替えにしても、手に入れたい刹那が世の中にはあるってことを。
「日野さん。悪いけど、俺の刹那を取り戻せなかったら、どっちにしろ椎名蓮は死ぬよ」
「はぁ?」
わけの分からぬことを言い続ける蓮に気でも狂ったのかと思ったが、日野の目には連は狂ったようには映らない。
それどころか確実に生気を漲(みなぎ)らせている蓮に、強すぎる生気を感じるほどだ。
俺の見てきた、椎名蓮とは……こんな男だったのか?
日野は、アクターの底力を見たような気さえして、ブルリと震えた。
「悪いけど、もう行かせてくれ。頼む、後生だ」
「後生って、……おい、蓮!!」
言いながら颯爽と駆け出した蓮に追いつけず、マネージャーの日野はマンションの駐車場で蹲った。
多分、どうしても駄目なんだろう。今日の彼を止めることは――
そう納得した日野は諦めてスマホを取り出した。メール作成画面を開いて、椎名蓮宛てに打ち込む。
『頼むから、ゴシップだけは勘弁しろ』
あそこまで言うのだから、相手は女に違いないと単純に日野は思った。
ストイックなまでに女性関係の綺麗すぎる椎名蓮。
だからこそ、今日の異常な彼を日野は止めたくなかった。
これからの自分がしなければならない『彼の不始末の始末』を思えば荷が重いが、それでもやってやるかと顔を上げるしかない。
そう覚悟させる程の熱意を、蓮から感じてしまったのだから。
これは、日野がどうにかしてやるしかないのだろう。

