「つい最近までオスガリアが攻めてきていて戦争してたじゃない? けれど最近またぱったりと止んだでしょ?」

「王子がオスガリアとの戦争は終わったって演説していたわ」

「ああ、私そのとき風邪ひいて寝込んでて聞いていなかったのね」

「戦争が終わったけれど、誰が止めたか知ってる?」

「え? 王子じゃないのかい?」

「もちろん、王子も関わっているけれど……違うのよ」



主婦はこれでもか、といった風に顔を横に振る。



「それに、王子は近々戴冠式を執り行うと言っていた」

「それってつまり……!」

「そう! 現れたのよ」



主婦は恍惚とした表情で、二人の主婦の顔を見渡した。


三人の頭の中に思い描かれているのはあの、伝説。


主婦の祖父母時代のものから、よく聞いた昔話。


王族が、王位を継承する時には、ある者の協力が必要になる。


この世界の中央に根を下ろし、大陸全体に力が影響している〈千年霊木〉。


その枝より造られし、神聖かつ荘厳な、意思を持つ杖──通称、〈魔女の証〉。


彼に認められない限り、この国の王として君臨できない。


しかし、〈魔女の証〉はある者にしか、操ることはできないのだ。


この世にその者が現れない限り、この世界に王は存在しない。


そう、つまり現れたのだ。


この国の魔術師たちの頂点に君臨する魔力の持ち主。


創世の魔法使い。






「魔女様が!」






その昔話には続きがある。


魔女の出現と共に新たな王は誕生する。


魔女が現れた時、新たな時代が幕をあけるだろう──。