「それに、魔女だとわかっても、この子は魔力が強いだけで、すぐに逃げだしてしまうんじゃないかと思っていたんだ」
木がさわさわと動いて、あたしたちを包むように木陰を作ってくれる。
蝉が、大合唱を始めた。
「でも、違った。 まおはとても、強かったんだ」
「そんな、あたしは……必死だっただけで……」
「それでも、いつも真剣に、できないことは訓練して、何事も自分から取り組んで……気づいたら、惹かれていたんだ」
優しい、青の瞳。
その瞳に見つめられて、なにも考えられなくなってしまう。
出会った頃は、こんな目はしていなかった。
いつも冷たくて、どこを見ているのか、なにを考えているのかわからない。
そう。
あたしはいつも、どこかで怯えていたんだ。
カカオが不意に、どこかに消えてしまいそうで。
そんなの、イヤだ。
カカオが、ふわりとあたしを抱きしめた。
「俺にはまおが必要なんだ」
耳もとで囁かれ、体温が急上昇する。
ああ、こんな時にも遠回しに言うだけではっきりとは言ってくれない。
少し悲しい気もするけれど、これが彼の精一杯の気持ちの表現なんだ。
そう思うとどんなことでも伝えてくれるのが嬉しくて。
幸せで胸がいっぱいになる。
あたしも、彼の背中に手を回す。
シトラスの香りと、その奥に感じる汗の香りに包まれて、あたしは微笑んだ。
「あたしだって、大好きだよ」
あたしが、何度だって伝えるから。
あなたの想いは伝わってるから。
だから、これからも一緒にいたい。
ウェズリアの夏の終わりを告げる風が吹いていく。
柔らかな陽だまりの中、ふわりと、二つの影が重なった。

![あたし、『魔女』として魔界に召喚されちゃったんですが。[2]](https://www.no-ichigo.jp/img/member/684618/kvlyibwqof-thumb.jpg)

