あたし、『魔女』として魔界に召喚されちゃったんですが。






「この者たちを──捕らえよ! 多少傷つけても構わぬ。 すべて捕らえよ!」

「「「すべてはローズ姫のために」」」



 大合唱した衛兵たちは、姫があたしたちに手の平を向けると共に、進軍を始める。


 銃口が、一斉に向けられた。


銃と甲冑、重厚感のある鉄がぶつかり合う音が、鳴り響く。


すっごい数!


一瞬狼狽えていると、指揮官らしき人が腕を振って合図した。



「撃ち方、構え!」



指揮官の腕が振り下ろされた。


 それを合図に雪崩のような轟音が辺りに鳴り響く。


風が唸り、弾丸の当たった家具や大理石の床が砕け散り、空気を濁した。


 鉛の雨は、あたしたちに容赦なく襲い掛かった。


 
「撃ち方、止め!」



 指揮官の声と共に、銃声と鉛の雨が止む。



「やったか……?」



 姫の笑いの混じった、声を零す……が、その直後。



「──なにっ!?」



それは戸惑いを纏った声に変わっていた。


 姫がおもむろに立ち上がったあたしたちに、怯えたように後ずさる。



「やだなぁ、ローズ姫。大事な事を忘れてない? あたしたちは魔法使いなんだよ」

「銃弾など効かぬ事、この度の戦で思い知っていたんじゃないのか?」

「そ、そんな……」

「これで終わり?」



 あたしは身体を覆うように張っていた防御結界をわざときらめかせ、ニッコリと、満面の笑みを姫に向けた。


我ながら、意地の悪い笑みだと思うけど。


姫の戦意を削ぐためだったんだけど、どうやらこんなことでは揺るがないようだった。



「まだ、まだだ……!」




姫の言葉に再び集中砲火を食らうあたしたち。


けれど、銃弾はあたしに当たる数ミリのところで押し止まり、ポロリと床に落ちた。




「あー、一つ忠告してもいい?」

「打て打てぇ!」



わざと明るくそう言ってみるけど、理性を失った姫には、言葉が届かないみたい。



「……そんなに闇雲に打つと、自分たちに跳ね返ってくるよ?」




思っていたよりもヒヤリとした声が出た。


途端に、銃撃が止んだ。


見るからに、兵たちが銃弾が己に跳ね返るのを恐れ、撃つことを躊躇している。


それを見た姫の顔が茹で蛸のように真っ赤に染め上がった。


力の限り歯軋りをし、その綺麗に整った顔を醜く歪めた。



「もっと強い武器を使え!」



 扉の奥から、まだまだ湧いてくる衛兵たち。


彼らは怯えきった兵たちを押しのけ、我先にと王座の間へ流れ込んでくる。


 もー、いったいここって何人いるの?


こーんな風に環境を最悪にしちゃった王族に仕えている人がいるかどうか謎だったけど、この顔ぶれを見る限り、どうやら皆、姫のことを崇拝しているようだった。


まぁ、姫は顔はいいもんなぁ……顔は。


 ため息でちゃうよ、本当に。