あたし、『魔女』として魔界に召喚されちゃったんですが。






「では、健闘を祈ります」

「ボルトも、シュガーも、気をつけて……」

「まお様こそ。 それでは、行ってまいります」



 そう言ったボルトとシュガーは、同時に壁から姿を現し、風のように駆け出した。


どうやらわざと姿を見せて、王座の間のある右側の通路とは別の方向へ誘い出す寸法らしい。


シュガーは駆け出した瞬間、黒猫の姿に戻り、高く一声鳴いた。



「……この城に、黒猫?」



一糸乱れぬ動きで巡回していた兵士達は一瞬呆気にとられ、シュガーから一歩手前で動きを止める。


すると、魔力が立ち上がり、そこにいた黒猫はいなくなっていた。


風を切る音がした刹那。



「ざーんねん。 俺は単なる黒猫じゃねぇんだよ」



どさどさと床に物が落ちる音がして、その場にいた五人の兵士は気を失って倒れていた。


その前に立つ少年は、口角を上げて意地悪げだ。



「さすが、やりますね」

「へへっ、ありがと」



ボルトに褒められ、年相応の表情を見せるシュガーは嬉しそう。



兵士達が倒れた音が聞こえたのであろう。


異変を感じ取った別の巡回兵がさらに現れ、床に積み重なった仲間達を見、その後その前にいる謎の美少年と美青年を見つめた。


一瞬空間を沈黙が支配した。


だが、さすがは訓練された兵士だ。


すぐさま攻撃態勢をとり、剣を構える。


 
「いたぞー!」

「侵入者だ!」

「捕らえよ!」

「ローズ姫のもとへは行かせるなーっ!」



 とたんに怒号と、銃を撃つ音が響いた。


魔法の発動音とは違う、生々しいそれ。


 あまりの大きさに、ビクリと肩が揺れてしまう。


 すると、カカオがあたしの肩に手を置いて、引き寄せてくれた。


 そうだよね。


 二人には、主であるあたしたちが己の魔力を多めに込めておいた。


それに二人はもともと強い。


あのくらいの人数は大丈夫なはずだから。


今のあたしたちに出来るのは、二人を信じること。


 気をつけて……。


 あたしたちは、シュガーたちが開けてくれた道に向かって駆け出した。