彼の声がしたところは、本棚がなく、長い木の机と椅子が置かれていて、そこに王子はいた。
ブラックブラウンのその机と椅子は、複雑で特徴的な浮き彫りが施されている。
月と……これは、獣?
三日月をバックに、狼のような獣が牙を剥いている彫刻。
なんだか、カッコイイ。
その横には、ペンタグラムが彫られている。
これは、魔方陣かな。
なんだか、こちらの世界に連れて来られたときに、足もとに現れた魔方陣に似ていて、気になってしまう。
「どうかしたか」
王子の声にハッとすると、あたしは王子の方に視線を移す。
「あ、いえ」
慌てて首を振り、王子の碧眼を見つめた。
「この彫刻が、キレイだなと思っただけです」
「これか、そうだな」
王子は机の真ん中にも彫られている彫刻を優しく白い指でなぞる。
「先々代の国王……俺の祖父が本が好きでな。 年中図書館に通っていたから、この図書館に合う、机を作らせたそうだ」
優しい目で、彫刻を見つめる王子。
あたしが出会って初めて見せた、優しい表情。
本当に少ししか変わらない、雰囲気が少し変わった程度、だけど。
なぜか、キュンとしてしまった。
「こちらに座れ」
「あ、はい」
王子に促され、あたしも王子の隣についた。

![あたし、『魔女』として魔界に召喚されちゃったんですが。[2]](https://www.no-ichigo.jp/img/member/684618/kvlyibwqof-thumb.jpg)

