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──ついにきた。


 あたしたちの目の前に広がるのは、環境が破壊されつくしたオスガリア。


 その奥には、霧をまたいでぼんやりと、城がたたずんでいるのが見える。


 横で、馬の蹄の音が高く鳴る。



「準備は大丈夫か?」



 声の主は、黒い馬のボルトに跨がったウェズリアの王子、カカオ。


 彼は、青い瞳を爛々と輝かせている。


 
「誰も、いないな」

「住民はみな、まだ生きていける森の奥地へと逃げ込んだらしいよ」

「……行こう」



 あたしは、シュガーを変化させた箒に横座りで座ると、ふわりと浮かびあがった。


 カカオが、ボルトの手綱を締める。


 ボルトがゆっくりと加速し始めた。


 あたしたちは、宮殿を目指し、進みはじめた。