あたし、『魔女』として魔界に召喚されちゃったんですが。






って、照れてる場合じゃなかった。


せっかく会話してたんだから、ちゃんと話聞かないと。


「予定まで少し時間がある。 話ながらそちらに向かう」

「話……ですか?」

「軽くこの世界について説明しておくべきだと思ってな」



 ついてこいと言ったカカオ王子は、お城に入ってすぐの階段は上らず、その脇にあった通路へと入っていく。


 あたしも、それに続いた。


大理石でできた廊下はどこか物々しくて、緊張してしまう。


しばらく廊下を歩くと、一つの大きな扉が現れた。


木でできた扉は開いていて、中をこっそり盗み見る。



「わぁ……!」



 部屋の中は、図書館になっていた。


 しかも、とても広く、ここだけで一軒のお屋敷が建つんじゃないかってほど。


 本棚は、天井まで届いていて、どれも古びた革でできた表紙の本で埋め尽くされている。


「どうした、何か気になることでもあったのか」



思わず立ち止まると、ついてこないあたしを不思議に思った王子がこちらを向いた。



「あ、えっと……ここ、書庫がとても広くて……」

「ああ、ここは図書館だ。 文字通り館一つ分の広さがあるからな。 ここの蔵書量は半端でない。 国一番を誇るだろう」



そんなに大きな図書館なんだ……。



「中を見たいか?」

「えっ、いいんですか?」

「さっきも言った通り時間はまだ少しある。 それにこの世界についても説明するといっただろう。 丁度いい。 ここでしよう」



そういった王子は、中へと迷いなく入っていく。


あたしも恐る恐る中へと入る。


どうやらカウンターはあるものの、司書となる人はいないようで、机の上に貸し出しを書き記す紙の束が乗っているだけだ。


 けれど字は、見るかぎり読めない。


というか、これは字なのかな?


なんだか記号のようなものがひたすら羅列していて、文法も予測できない。


英語とか見たいに単語単語で分かれるわけじゃなくて、一文字で一つの意味がありそうだ。


なんだっけ、こういうの、教科書で見たよ。


甲骨文字? 造形文字?


なんだったっけ?


だけど、どれも読めるわけじゃないし、まずここは異世界だ。


 そりゃ、魔界の文字だもんね~。


理解できなくて当然だ。


あたし、ここに来たの初めてだもん。


 それでも、本好きなあたしは大興奮で、キョロキョロと辺りを見渡す。


 革表紙って、なんかいい。


 趣(おもむき)があるっていうか。


 しばらく本棚を舐めるように眺めていると、



「まお、こっちにきてくれ」



 と、遠くの方で王子様の声がして、慌てて手に持っていたずっしりと重い辞書のような本を棚に戻し、そちらに向かった。