はぁ?


 自意識過剰すぎない?


 けれど、姫は話を続ける。



「というのは、悲しいですけれど、ウソなのですが……」



 当たり前じゃっ!



「カカオ様は、国を守るために来てくださるのです」

「そうですね」



ここで姫との結婚を断れば二度と平和協定を結ぶことはできなくなってしまうから。


平和協定が結ばれなければ、オスガリアは再びウェズリア侵略に乗り出すだろう。



「カカオ様はオスガリアにウェズリアを侵略させないためにわたくしと結婚しようとしているのですわ」

「だからそれはさっきから言ってるでしょ。 貴方がウェズリアに嫁いでくれば、友好関係を国民にアピールできるもの」

「あら、わたくしはウェズリアには嫁ぎませんわよ」

「は……?」



姫の言葉にあたしは身動きが取れなくなる。


姫はあたしが狼狽えを見て、表情を変えた。



「……貴女が嫁がないんですって?」



どうやら失言だったようで、姫は目線を逸らさなかったものの、表情はないままだ。


カカオと姫が結婚しても姫が嫁がないということはカカオが婿入りすることを示している。


ウェズリアの王は、初代王の血胤であることを重んじる。


王亡き今、この国には王位継承者はカカオしかいない。
 

そのカカオがオスガリアに婿へ行けば、ウェズリアの王はいなくなってしまう。


それじゃあ、ウェズリアが成り立たないじゃない!


っ! ていうことは!


オスガリア側の最初の目的は、ウェズリアの土地を奪うこと。



「そういうことなのね」



たしかに、支配者がその場からいなくなり、ましてや自分たちの配下に入るとなれば、平和的にウェズリアの土地が手に入る。